毎年、この時期になると訪れる温泉が。
夏休みあけ~紅葉前ということで比較的空いているシーズン(?)を狙って。山奥の鄙びた温泉宿。ランプの灯りだけが灯る温泉を独り占め出来る機会も多く、我が夫婦のお気に入り。虫もわんさか登場しますがそれもまた風情というもの^^;
秘境も秘境にある温泉宿の周囲には徒歩で観光できそうなところはなく、基本部屋と温泉の行き来しかしいません。そして、今年はスマートフォンやパソコン、タブレットなどの代わりに本を手に向かいました。
週末の二日間、できるだけデジタル機器を遮断することを意識。
もちろんテレビも音楽もラジオもカメラもさようなら。とにかくデジタルっぽいものとさようなら。本を読むか、温泉に浸かるか、ストレッチをするか、寝るか、食べるか、そして、夫婦の会話をするかだけ。
たった二日間ですが、デジタルから開放された気分になりスッキリと。妙な達成感もあります!
スマートフォンがわたしから奪ったもの。
スマートフォンはとても便利な端末です。
「今から使用禁止よ!」と言われると途方にくれるかもしれません。が、その一方でスマートフォンはわたしの生活から多くのものを奪いました。
その一つに「ぼーっとする時間」があります。
昔はふとした瞬間にぼーっとする瞬間がありました。電車の中でつり革を掴んでいる時間、家事を終えた後、コーヒーを飲む時間、雄大な景色に心奪われて見惚れる時間、買い物の途中で見かけた赤とんぼに季節の移ろいを感じる時間、夜寝る前に布団の中でごろごろする時間、ふとした瞬間、ふとした隙間でぼーっと。
でも、今はそんなふとした瞬間、ふとした隙間をかなりスマートフォンで埋めているような気が。
難しく考えずにただ「ぼーっ」としていればいいんだけれど、そんな簡単なことなんだけれど、ついついわたしの右手にはスマートフォンが存在しているかもしれない、という事実に気づき愕然とします。
意識的にスマートフォンを触る時間を減らすようにしていますが、意識だけでは追いついていかないことを感じます。
だからこそ、たまにはスマートフォンを放り出して、旅に出よう、と。
行き慣れた温泉宿。
今回、初めてスマートフォンを家に置いて旅に出ることを決行しました。
その際にちょっと迷いました。
- 初めての場所 → 数年前を思い出し、地図を片手に何があるか分からない感覚で楽しめるかも?
- 行き慣れた場所 → 安心安全確実。今まで見落としていた新たな発見ができるかも?
というこの2つの選択肢の間で。
知らない土地に地図を片手に訪問。わたしが20代の頃なんかそれが普通でした。道に迷ったり、分からなかったり、不便だったり、怖かったり、何度も地図を見て、そして、それが楽しい時期でした。
でも、最近はなんでもかんでもスマートフォンでサクッと調べられてしまう。
そう、知らない土地で迷っても大丈夫。GoogleMAPさんが教えてくれる。食べる場所に迷っても大丈夫。食べログさんが教えてくれる。何をしたらいいのかわからない。Googleさんで検索をかけたら地域で行われているイベントを教えてくれる。お土産は何を買ったらいいのか分からない。Googleさんで・・・以下略。
「そうじゃない、旅ってそうじゃない!」
と叫ぶわたしがいます。
見知らぬ土地でポツンと途方に暮れながら、右往左往するのが旅じゃないの?計画性に欠けるわたしの旅はそうだったわ。
もう一度、あの不安といくばくかの恐怖、脅え、そしてそれらを上回る何もしていない感と驚き、感動、喜び、スリリングさを旅で味わうために。
少しだけ「さようなら、スマートフォン」
20代の半ば、海外を放浪していた時期。
20代の半ば、転職の合間に1年ぐらいかけて海外を放浪しました。
若さゆえの勇気と無軌道さ。そして、何も知らないがゆえの無鉄砲さ。
あの頃は今ほどインターネットが生活に入り込んでいませんでした。外務省の渡航情報とか見ながら「へぇー」とか頷いていたというのどかな時代^^;そして、海外に出るといとも容易く一人に、孤独になれました。
何をしたらいいのか分からず、というか見知らぬ街に出るのが怖くてひたすら宿泊先に篭っていたことも。
「何をするために海外へ行ったのか?」と言われそうですが、「何もしないために忙しい日本から逃げた」というのが正解だったかも。わたしの仕事は激務だったため、その現実からふいっと飛び降りた感じ。
日本はもちろん、海外でもまだネットカフェとかも普及する前の時代でした。
今よりもずっと容易く異国の地で誰とも繋がらず一人になれるもの。その孤独がたまらないほど心地よく。そして寂しくなったら日本へ帰る、という気ままな生活。
あの感覚を取り戻したかった。
誰とも何とも繋がらない場所で一人過ごす感覚を。そしてひたすらぼーっとする時間を。
そうだ、スマートフォンを放り出して、旅に出よう。
ルールはただひとつ。
場所はどこでもいいです。
都会のラグジュアリーなホテルもステキ。以前から憧れていた遠方の温泉宿もリラックスできるかも。秋の紅葉を眺めながらの登山もいいかも。
旅に出るのは大変だ!時間がない!お金がない!という場合は、ウィンドーショッピングでも散歩でも公園でもカフェでも図書館でもいいかも。
スマートフォンをほんのひととき手放す時に感じる気持ちは人によって様々でしょう。
不安でしようがない人。どうってことのない人。ないと困るなーと実感する人。別になくてもいいわと思う人。やっぱり必要なものだわと噛みしめる人。
どんな気持ちでもいい。
スマートフォンから離れる気持ちと向きあってみませんか?ただただぼーっとしてみませんか?その中で浮かび上がってくるものは何?
そして、その時に感じた気持ちを受け止め、もう一度スマートフォンを手にしましょう。
孤独という切符を買ってでも、自由な旅人でいたい。
戸川昌子
※個人的に登山の時は逆にスマートフォンがあったほうがいいかな、と思っています。万が一の場合に備えて。
おまけ:強制的圏外。
また、秘境のお宿では強制的にデジタルデトックス出来るところが^^;
わたしが今回宿泊した旅館もそう。
スマートフォンを家に置いて出るのは不安・・・という人はそういうお宿に宿泊するとよいかもしれませんね。
ホテルによってはデジタルデトックスプランを打ち出しているところもあります。フロントでデジタル端末を預ける形になるようですね。